お気に入りに追加筋トレを本気で続けているのに、最近なんだか伸びない。重量は止まり、体は重く、やる気まで削られていく。ここで多くの人が選ぶのは「さらに追い込む」だ。だが結論から言おう。伸び悩みの正体は、努力不足より“回復設計の不足”である。
トレーニングは、やればやるほど伸びる単純作業ではない。刺激→回復→超回復というサイクルが回って初めて、身体は強くなる。つまり、強くなる男は「攻め方」だけでなく「引き方」を知っている。その引き方の技術が、デロードだ。
デロードとは、1週間前後、トレーニングの負荷を意図的に落として疲労を抜き、次の成長局面に入るための戦略的な調整期間である。サボりでも後退でもない。むしろ、長期で勝つための“再加速ボタン”だ。
なぜデロードが必要なのか。理由は3つある。
1つ目は、神経系の疲労。高重量トレーニングは筋肉だけでなく神経にも大きなストレスをかける。神経が疲れると、フォームの再現性が落ち、同じ重量でも重く感じる。
2つ目は、関節・腱の蓄積疲労。筋肉は回復しても、結合組織は回復が遅い。ここを無視して突っ走ると、ある日突然痛みとして爆発する。
3つ目は、メンタル消耗。常に全力を求めると、集中力と意欲が先に尽きる。継続力は気合いではなく、設計で守るものだ。
実践方法はシンプルでいい。デロード週は以下のどちらかを選ぶ。
・重量を通常の80〜85%に下げ、セット数は同じ
・重量は維持し、セット数を50〜60%に減らす
初心者〜中級者なら、後者(セット削減)が取り組みやすい。フォーム練習の質を保ちながら、疲労だけを下げられるからだ。頻度は4〜8週間に1回が目安。ただし、次のサインが2つ以上出たら前倒しで入れていい。
・ウォームアップ時点で身体が重い
・2週連続で主要種目の記録が落ちる
・睡眠時間は足りているのに朝からだるい
・小さな痛みが消えない
・トレーニング前のワクワク感が消える
ここで大事なのは、「休む勇気」を感情で判断しないことだ。数値で決める。
おすすめは、メイン種目のRPE(主観的きつさ)と挙上速度の体感をログ化すること。普段RPE8で上がる重量が、RPE9.5以上に跳ねる状態が続いたら、回復不足のシグナル。気合いで押し切るより、1週間引いて4週間伸ばしたほうが、年間の総成長量は確実に大きい。
さらに、デロード週にやるべきことは「何もしない」ではない。可動域改善、呼吸の再学習、弱点部位の軽負荷トレーニング、睡眠の固定化。この4つに時間を使うと、次の通常週でフォームと出力が一段上がる。つまりデロードは、疲労除去と技術再構築を同時に行う“再起動期間”だ。
強い男ほど、毎回潰れるまで追い込むと思われがちだ。しかし本当に強い男は、勝つために自分を制御できる。今日の満足ではなく、半年後の進化を取りにいく。短期の快感より、長期の成果を選べる男が、最終的に一番デカく、一番強くなる。
伸び悩みを感じたら、才能を疑う前に設計を見直そう。デロードは逃げではない。未来の自分に負荷を渡すための、戦略的な一手だ。次の1週間、あえて引け。引く勇気が、次の記録を押し上げる。
では実際に、1か月単位でどう組むか。例として、週4回トレーニングの人向けにモデルを示す。
第1〜3週:通常週。メイン種目はRPE7.5〜9で漸進。
第4週:デロード週。メインはRPE6〜7、補助種目は半分、失敗反復はゼロ。
これだけで、翌月の立ち上がりが明らかに変わる。多くの場合、デロード明けの1〜2週目で「同じ重量が軽い」「フォームが安定する」「集中が戻る」という体感が出るはずだ。これは気のせいではない。疲労が抜けたことで、出力と技術が同時に回復している証拠である。
栄養面でも、デロードを軽視しない。摂取カロリーを極端に落とす必要はないが、タンパク質は体重1kgあたり1.6〜2.2gを維持する。炭水化物は通常の8〜9割程度を目安に調整し、睡眠の質を優先する。回復の土台は、トレーニング外で作られる。
もう一つ、仕事が忙しい人ほど知っておきたい視点がある。疲労はトレーニングだけで溜まるわけではない。長時間労働、通勤ストレス、睡眠不足、人間関係。生活全体がハードな週は、ジムでの負荷を下げる判断が賢い。自分を追い込むことと、自分を壊すことは違う。
最後に断言する。成長を止めるのは、根性の欠如ではない。設計の欠如だ。だから、伸びる男は記録をつけ、兆候を読み、必要なタイミングで引く。これができる人間は、筋トレだけでなく仕事でも強い。なぜなら、短期の感情ではなく長期の成果で意思決定できるからだ。
今日からは「追い込めた日」を誇るだけじゃなく、「回復を管理できた日」も勝ちとして数えよう。その積み重ねが、体も人生も、確実に前へ進める。
焦らなくていい。正しく積み上げれば、身体は必ず応えてくれる。だからこそ、賢く鍛えよう。
明日の自分を強くする選択を、今日のトレーニングから始めよう。














