「ちゃんと追い込んでいるのに重量が伸びない」「関節が重い」「集中が続かない」。その停滞、根性不足ではない。多くは“疲労の設計ミス”だ。
強い男は、追い込む日だけでなく、回復を戦略化する日を持つ。筋力は“気合”ではなく「刺激→回復→適応」の順にしか伸びない。刺激を積み増すほど、回復の管理はシビアになる。だからこそ今日の結論はこれだ――停滞を破る鍵は、意図的に“抜く週(デロード)”を入れて、次の伸び代を作ること。
■なぜデロードで伸びるのか(理屈)
トレーニングの成果を邪魔するのは、筋肉痛よりも“蓄積疲労”だ。神経系の疲れ、腱・関節の微細な炎症、睡眠の質の低下。これらが重なると、同じ重量でも動作が雑になり、フォームが崩れ、痛みが出て、結果として刺激の質が落ちる。
デロードはサボりではない。「刺激の質」を回復させるための投資だ。疲労を返済すると、次サイクルで同じRPE(きつさ)でも“前より重い重量”が扱える。筋力が階段状に上がるのは、この仕組みがあるからだ。
■4週間の基本設計(これだけ守れ)
目安はRPEで管理する。RPE7=あと3回、RPE8=あと2回、RPE9=あと1回の余力。
1週目:土台週
・主要種目:RPE7〜8、総ボリュームは普段の90〜100%
・狙い:フォーム再現性を100点に戻す。勢いで上げない。
2週目:負荷上昇週
・主要種目:重量を2.5〜5%上げる
・補助種目:セットを1つ追加(総ボリューム105〜110%)
・狙い:成長刺激を“量で確保”する
3週目:ピーク週
・主要種目:トップセット1本だけRPE8.5〜9、以降は丁寧に落とす
・狙い:「全部出し切る」ではなく「勝てる最大値」を作る
4週目:デロード週(最重要)
・重量:85〜90%へ
・総ボリューム:60〜70%へ
・狙い:痛みの芽を潰し、神経と睡眠を立て直す
■デロード週の“具体メニュー”例
やることは同じ種目でOK。ただし目的は記録更新ではなく、動作の精度回復だ。
・スクワット:普段5×5なら、3×5にする。テンポを落として深さを揃える。
・ベンチ:普段4×8なら、3×6。肩甲骨の固定と脚ドライブを確認。
・デッド:普段3×5なら、2×5。背中の張りとバー軌道だけに集中。
加えて、可動域(股関節・胸椎)と呼吸(腹圧)を10分でいいから整えろ。ここを雑にすると次のサイクルでまた崩れる。
■毎週記録すべき「3つの指標」
感覚だけで走ると、停滞は繰り返す。最低限、次の3つを数字で持て。
1)主要種目のe1RM(推定1RM)
2)朝の安静時心拍
3)睡眠時間+起床時疲労(10点満点)
判断ルール:
・e1RMが横ばい、心拍が平常より+5以上、疲労7以上 → 追加の追い込みは禁止。デロード前倒しも検討。
・e1RMが微増、心拍安定、疲労5以下 → 次サイクルで重量を積極的に上げていい。
“男らしさ”は無謀ではない。現実を測り、戦略を修正する胆力だ。
■デロード後の「リロード」手順(次サイクルで確実に伸ばす)
デロード明けにやりがちなのが、いきなり3週目の強度へ戻すこと。これが再停滞の典型だ。
リロードはこうする。
・次サイクル1週目は、前サイクル1週目の重量+2.5%(もしくは同重量でRPEを1段下げる)
・ピーク週のトップセットは、前回より“回数か重量のどちらか一方”だけを上げる(両方欲張るな)
・関節に違和感がある種目は、同じ動作パターンの別種目に置換する(例:バーベルベンチ→ダンベル、ハイバー→フロント)
伸びる男は、勝ち方を固定する。
■分割が違っても使える(週2〜5回の調整)
週2回なら「主要種目のセット数を増やし、補助は最小」にする。週5回なら「主要は短く、補助を分散し、睡眠を最優先」。
大事なのは回数ではない。“総疲労を管理できるか”だ。自分の生活(仕事・睡眠・移動)に合わせて、回る設計に落とし込め。
■最後のチェックリスト(公開前に自分に問え)
・今週のRPEは守れたか? それともプライドで上げたか?
・睡眠が崩れているのに、追加で追い込んでいないか?
・デロード週に「別メニューでハードに頑張る」暴走をしていないか?
この3つにYESがつく男は、伸びる。
■よくある失敗(ここを踏むと伸びない)
・デロード週に“別種目を大量に追加”して結局疲れる
・3週目に毎回限界テストをして関節を壊す
・RPEを無視して、その日のプライドで重量を決める
強さは見栄ではない。継続できる構造の中にしか宿らない。
最後に言う。停滞期は敗北じゃない。設計図を書き直す合図だ。
次の4週間、ただ頑張るのをやめろ。勝てる形で鍛えろ。デロードは“逃げ”ではなく、次の攻撃準備だ。構造を握った男から、体も仕事も伸びていく。